ポン吉のそれからを気にされていた方々、申し訳ありません。
その後の結末はあまりにあっけなく、酷なものとなってしまいました。
とても切り出し難く今日に至ってしまいましたことお許し下さい。
2008年9月初旬。ちょうど1年前の朝のことです。
リビングに置いた急ごしらえの箱に寝ていたポン吉を、新参者の外猫がくわえて、さらっていってしまったのです。ほんの一瞬の出来事でした。物音に気づいたときは
もう遅く、そのあと妻と近所を探しまくりましたがダメでした。
ごめんね、ポン吉。どこかできっと生きていることを念じて、
最終回と致します。
ノミの駆除作業中ずっと、仔猫はヤニで半分見えなくなった目でよろよろしながら私の足にまとわりついて来た。マスクをしながらの作業だと下のほうの視界が遮られ、彼を踏み潰しそうになる。少し遠くに追いやっても、追いやってもまとわりつく。まるでぜんまい仕掛けのおもちゃのように。それも、壊れかけだけど、、、。
ヤバイ。本当にやばくなりそうである。このままでいくと、きっと“こいつ”を家に連れてゆきそうな そんな「構図」が見えてくるのである。
というか、倉庫の傍らでこの顛末を窺っている奥さんといい、鳴きながら私についてくる仔猫といい 「わたしがこの仔猫の新しい飼い主になる」という予定調和の条件がばっちり揃ってしまったようだ。それも私の意志とは無関係に。
「それでは駆除作業は終わりましたんで、しばらく経過を見てくださいね。奥さん。」
そう告げると、私はワゴン車のドアをばたんと閉じ、エンジンキーを回した。
助手席の床にはA4版くらいのダンボール箱。そのなかで“そいつ”がか細い声で鳴いていた。 続く
引っ張り上げたその手の先にはお世辞にもかわいいとは言えない子猫が。 目ヤニで片方の目が開かず、羽毛のように驚くほど軽い。ありゃりゃである。
一瞬、私の家族の顔が頭に浮かんだ。動物好きの義母もこのところ体調が思わしくない。それに、半年前に17年間家族と苦楽を共にした老猫を失ったばかりで、ようやくそのペットロスから家族が立ち直った矢先である。またぞろ子猫の世話でもなかろう。つれて帰っても育つかどうかの心配より、うちの妻と義母への気遣いが大事なのだ。
「うちの猫ではありませんから、関係ないですから!」
玄関先でこちらを窺っておられた奥様が悲壮な声で私に叫んでいる。
私にどうしろというのか。奥様の声は、一刻も早くその子猫を自分の視界から消えて欲しい!そんな訴えにも私には思えた。
当事者間のパワーバランスから言って、私は奥様に完全に負けていたのだ。
「はあ」。私の返事はあまりにも力なく、宙を泳いでいた。
つづく。
8月初旬
埼玉県H市 ホームページのお客様より緊急出動のお電話。庭で大量の小さな虫が飛んでおり、足をさされて困っているとのこと。現場に急行し、早速調査に入る。
脚にまとわり付く小さな黒い昆虫を粘着板で捕獲。ルーペで確認すると【ノミ】と判明。庭の奥にある開放型の物置を調べてゆくと、積み重なったダンボール箱の奥から、子猫の鳴き声が。嫌な予感。遠くのほうで奥様がこちらを 覗っている。もしや他にも死んだ子猫がいるかもしれない、、、。しかし、異臭は無い。箱の切れ間から小さな細い子猫の手が私に伸びてきた。不安を振り払うようにエイヤーと小枝のような手を引っ張り上げた。
続く。